10倍するということは、特別な意味があります。

 数は、たいてい10進法で書かれています。あまりに当たり前なので、そのことを取り立てて言う人はいません。ですが、だから大切なことを忘れているということもあります。

今回は、その一つである「10倍する」ということを考えてみましょう。

単純に「数」についてだけ考えますので、「ひます」でいえば、「まとまりの個数」だけの話と考えてください。「数」は、この「まとまり」を数えているわけですが、数の表現そのものが10進法という「まとめて数える」という方式を採用しているので、そこに焦点を当ててみます。

何が特別かというと、それは本当は当たり前すぎることなのですが、10をかけると、10進法では一つ大きな「まとまり」になる、ということです。つまり、「ひとまとまり」が「十まとまり」になり、「十まとまり」が「百まとまり」になり、さらに、「百まとまり」が「千まとまり」になります。

イメージとしては、以下の通りです。


このように、いくつかをまとめて次々と大きなまとまりにしていくことを、「ひとまとまりの量」の考え方では、「包み上げる」と表現しています。数表現の10進法では、その「包み上げ」が無限に行えるわけです。
それで、上のイメージを数字の計算式にしてみると、1×10=10、10×10=100、100×10=1000、となります。数字の計算では、10倍すると0が1個増えるわけです。これは、筆算で計算するときにとても便利な性質ということになります。

ですから、3×10は、「ひとまとまり」が3つあるのを、それぞれ10倍すると考えることができて、以下のようなイメージになります。

3つの「ひとまとまり」が、それぞれ「十まとまり」になるわけです。「ひとまとまり」の個数が2倍、3倍と次々と増えるというイメージではなく、まとまりの大きさが一気に一つ大きくなるというイメージです。このイメージを持てるかどうかが大切なわけです。

同様に、30×10=300、300×10=3000 は、以下のイメージです。


そこで、20倍するということを考えると、20は、10×2ですから、10倍して2倍すると考えることができます。

したがって、3×20は、3×10×2と考えることができます。
『3×10で「十」のまとまりが3個できて、それを2倍するので、「十」のまとまりが6個になる。』と考えることができます。以下のイメージです。


この「×20」を「×10×2」のように考えることを、「分ち掛け」といいます。
つまり、まず10倍して一つ大きなまとまりを作り、さらにそれを2倍して、まとまりの個数を求めるわけです。この考え方を式で示してみます。
3×20=3×10×2=30×2=60
ところが、これでは何をしているのか、ちょっとわかりずらいと思います。アラビア数字で表すと様々な意味合いが想起されるので、数式だけで上のイメージを理解することは無理です。上のような「まとまり」が明確に分かる図を使うことは大切なことだと思います。

10進法では、「ひ」「十」「百」「千」と次々とまとまりが大きくなるので、
10倍すると1つ大きなまとまりになる。
100倍すると2つ大きなまとまりになる。
1000倍すると3つ大きなまとまりになる。

となります。このことは、10進法の計算にとって、とても重要なことです。
それと、「分ち掛け」を組み合わせて、何桁もあるかけ算を効率よく計算できるようになっているわけです。236×354などを、200×300や30×300などに分解して考えて見てください。何と複雑なことをすいすいと計算しているのかということがわかってくると思います。

小学生でこのような計算を学習するわけですが、本当の意味を分からないままやっている子供たちも多いと思います。筆算ができるようになっても、どんな理由で何をしているのかを考え直す機会を持つようにできればいいと思います。いつということは問いません。

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